週1回45分の療育を、子どもの「できた!」につなげるために!
(2026年11月1日(日)に実施いたしましたミチテラスLab.主催「未就学児発達支援セミナー 2歳・年少・年中の今やっておきたいこと-発達が気になる子の早期療育と、その成果とは?-」の内容をまとめさせていただいています。)
― 子どものことばと暮らしを育てる早期支援 ―
「ことばがなかなか増えない」「お友達とうまく遊べない」「着替えや身支度に時間がかかる」。
子育てをしていると、お子さんの発達や日々の生活について、気になることが出てくるかもしれません。
そんなとき、どのような支援ができるのでしょうか。また、専門家による療育は、どのくらいの時間を受ければよいのでしょうか。
今回は、私たちが行った研究をもとに、子どもの成長を支える早期療育についてご紹介します。

発達が「気になる」子どもは、決して少なくありません発達が「気になる」子どもは、決して少なくありません
私たちは、地方の私立認定こども園や私立幼稚園を対象に、子どもたちの発達や保育の中で気になることについて調査しました。
保育者62名から得られた回答をもとに、0~5歳児クラスの子ども1,057名について調べたところ、知的障害や発達障害の診断を受けている子どもは41名(3.9%)、診断は受けていないものの、保育者が発達や行動などについて気になると感じている子どもは168名(15.9%)でした。
合わせると209名で、調査対象となった子どもの約5人に1人に、診断や保育者の気づきという形で、支援を考えるきっかけが見られました。
ただし、これは調査対象となったクラスでの結果であり、全国の子どもの5人に1人に発達障害があるという意味ではありません。
また、「気になる」ということが、必ずしも障害があることを意味するわけでもありません。
大切なのは、診断の有無だけに目を向けるのではなく、子どもが日々の生活の中でどのようなことに困っているのか、どのような手助けがあれば過ごしやすくなるのかを考えることです。
週1回45分の療育で、どのような変化が見られたのでしょうか?
私たちは、認定こども園に通う3名の子どもを対象に、園の中で専門的な療育を受けられる仕組みをつくり、約8か月間にわたって実践しました。
療育は週1回45分程度で、子ども一人ひとりの目標に合わせて、個別または2~3名の小集団で行いました。
例えば、「かして」「やって」など、自分の気持ちやお願いをことばで伝える練習をしました。
また、おままごとや人形遊びを通して、相手とやり取りしながら遊ぶ練習や、上履きを自分で履くための練習なども取り入れました。
こうした練習では、子どもが楽しめる遊びを活用しながら、必要に応じて大人がことばや動作の見本を示しました。そして、子どもが自分から伝えられたときには、その思いを受け止め、希望した遊びができるようにするなど、楽しみながら学べることを大切にしました。
その結果、3名とも「かして」などの要求を自分からことばで伝える目標や、指導者と10分間ごっこ遊びを続ける目標を達成しました。
さらに、発達の様子や日常生活の力を調べる評価でも、3名とも開始時より点数が上昇しました。
保護者からも、「子どもの気持ちや出来事が伝わるようになった」「友達を遊びに誘うようになった」「思いが伝わらずに泣くことが少なくなったように感じる」といった、生活の中での変化が報告されました。
もちろん、すべての目標が達成されたわけではなく、引き続き練習が必要なこともありました。また、今回の研究は3名を対象としたものであり、自然な成長や普段の保育などの影響も考えられるため、こうした変化が療育だけによるものだと断定することはできません。
それでも、一人ひとりに合った目標を設定し、楽しみながら学ぶ機会をつくることの可能性を示す結果が得られたと考えています。

子どもの成長を、家庭と園と一緒に支える
今回の研究で特に大切にしたのは、療育で学んだことを、普段の生活でも使えるようにすることです。
例えば、療育の時間にボールを借りるとき、「かして」と伝えられるようになったとします。
しかし、療育の先生には伝えられても、お友達や家族にはうまく伝えられないことがあります。
そこで、今回の研究では、園の先生と子どもの目標や支援方法を共有し、療育で練習したことを普段の保育の中でも活かせるようにしました。例えば、療育で「かして」と伝えられるようになったら、お友達との遊びの中でもそのことばを使えるように、先生と一緒に支援の方法を考えました。
さらに、保護者の方には、ペアレント・トレーニングと呼ばれる研修を4回実施しました。これは、子どものよい行動の見つけ方やほめ方、子どもが過ごしやすい環境の整え方などを学ぶものです。家庭での困りごとについても相談しながら、それぞれのご家庭で取り入れやすい関わり方を一緒に考えました。
このように、今回の研究は、週45分の療育だけを行ったものではありません。子どもへの専門的な療育に加えて、保護者への支援や園の先生との連携を組み合わせた取り組みです。
そのため、「週45分の療育だけで十分な効果が得られる」と結論づけることはできません。
一方で、療育の時間に学んだことを、家庭や園での生活にもつなげていくという考え方は、子どもの成長を支えるうえで大切だと考えています。

ご家庭でも、小さな「できた!」を大切に!
子どもの成長を支えるために、ご家庭で特別な教材をたくさん用意したり、毎日長時間の練習をしたりする必要があるとは限りません。
例えば、お子さんが好きな遊びをしているときに、「もう1回」と伝える機会をつくってみるのも一つの方法です。
ことばで伝えることが難しければ、指さしや身振りでも構いません。
子どもが自分なりの方法で気持ちを伝えられたら、それに応えて一緒に遊びを楽しみます。
こうした日常のちょっとしたやり取りも、子どもが人とのコミュニケーションを学ぶ大切な機会になります。
もちろん、家庭での取り組みが保護者の負担になってしまっては、長く続けることが難しくなります。
保護者だけで頑張ろうとするのではなく、園の先生や療育の専門家と相談しながら、無理なく取り入れられる方法を見つけていくことも大切です。
子どもの発達には、一人ひとり違いがあります。できるようになるまでの時間も、得意なことも、必要な手助けも異なります。
だからこそ、「まだできないこと」だけに目を向けるのではなく、昨日より少し伝えられたこと、初めて一人でできたことなど、小さな成長にも目を向けていただきたいと思います。
療育の目的は、単に練習した課題ができるようになることではなく、子どもが自分の気持ちを伝え、周囲の人と関わりながら、毎日の生活をより豊かに送れるようになることです。
これからも、子どもと保護者、そして園や療育の専門家が一緒になって、一人ひとりの「できた!」を育てていければと思います。

参考文献
宮崎光明・宮一志(2025)2歳児クラスに在籍する特別な支援を要する子供への「認定こども園版通級指導教室モデルプログラム」による早期療育の効果.『発達研究』39,99–112.