ことば児童発達支援療育

子どもが見ている世界に、目を向けてみよう!

―ことばが気になったときに―

「もうすぐ2歳になるけれど、ことばが少ない気がする」
「同じ年齢の子はお話ししているのに、うちの子はまだ……」
「こちらの言っていることは分かっているようだけれど、ことばが出てこない」

ことばの育ちについて、保護者の方々からよくお受けするご相談です。
ことばがなかなか出てこないと、心配になります。
しかし、子どもの成長には、一人ひとり違った歩みがあります。ことばが出始める時期も、増えていく速さも、興味を持つものも、それぞれです。
だからこそ、ことばの数だけで、その子の育ちのすべてを判断することはできません。

では、ことばが気になったとき、私たちは何に目を向けたらよいのでしょうか。

私は、そんなときこそ、子どもが見ている世界に目を向けてみてほしいと思っています。
「この子は、どんなことに興味を持っているのかな」
「今、どんなことを考えているのかな」
「何が楽しくて、何が不安なのかな」
ことばが出ているかどうかだけでなく、お子さんのことをもっと知ろうとしてみる。
そこから見えてくるものが、きっとあると思うのです。

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ことばになる前から、子どもたちは伝えている

例えば、お散歩の途中で、小さな虫をじっと見つめている子どもがいたとします。
大人から見れば、何気ない光景かもしれません。けれど、その子にとっては、大事な瞬間なのかもしれません。
「なんだろう?」「動いた!」
そんな気持ちが、ことばになるよりも前から、子どもの中には生まれています。
そこに大人が気づき、「虫さんがいたね」「動いているね」と声をかける。
子どもが大人の顔を見たり、もう一度虫に目を向けたりする。

こうした何気ないやりとりも、ことばの育ちにつながる大切な経験です。

子どもは、ことばを話し始める前から、視線や表情、身振り、声、行動など、さまざまな方法で周囲の人と関わろうとしています。
指をさして何かを知らせたり、好きなものを見つけて笑顔になったり、困ったときに大人の手を引いたり。
その一つひとつが、子どもなりの表現であり、誰かに思いを伝えようとする姿でもあります。

ことばは、人との関わりの中で育つ

ことばの発達は、単に単語をたくさん覚えることではありません。
子どもが何かに興味を持ち、その興味を誰かと共有すること。
自分の思いが相手に伝わること。
相手の表情やことばから、新しい意味を知ること。
こうした経験の積み重ねが、ことばの発達を支えています。

発達研究においても、子どもと大人が同じものに注意を向ける「共同注意」や、子どもの興味や働きかけに大人が応じる「応答的な関わり」は、ことばの発達と深く関わることが知られています。

大切なのは、大人が一方的にことばを教えることだけではありません。
子どもが何を見ているのか、何に心を動かされているのかに気づき、その世界を一緒に楽しむこと。
その中で生まれる「おもしろい!」「伝えたい!」「分かってもらえた!」という経験が、ことばを使って人と関わる力の土台になっていくのです。

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「心配だな」は、子どもを知るきっかけ

ことばの発達が気になっていても、「もう少し様子を見ましょう」と言われたり、何を相談したらよいのか分からなかったりすることもあるかもしれません。
子どもの発達には個人差があります。
しかし、個人差があることと、気になることを相談しなくてもよいことは、必ずしも同じではありません。

例えば、家庭では大人が子どもの思いを自然にくみ取っているため、困る場面が少なくても、園などの集団生活では、自分の気持ちが伝わらず戸惑うことがあるかもしれません。
反対に、家庭では気づきにくかった子どもの得意なことや、新しい一面が、集団の中で見えてくることもあります。

大切なのは、どちらか一つの姿だけで判断するのではなく、さまざまな場面での子どもの姿を知ろうとすることです。そして、気になることがあれば、専門家と一緒に考えてみることも、その子を理解するための一つの方法です。

今、その子にはどのような力が育っているのか。
どのような場面で困っているのか。
どのような関わりや環境が、その子の育ちを支えるのか。
それらを一緒に考えていくことが、支援の出発点になることもあります。
子どもを理解し、その子に合った関わり方を見つけ、試していく時間と選択肢を増やせること。
そこに、早期から子どもの育ちを支える大切な意味があると考えています。

子どもの可能性は、日々の暮らしの中に

私たちは、子どもの発達について考えるとき、つい「まだできないこと」に目を向けてしまいがちです。
けれど、子どもたちは、今この瞬間にも、さまざまなことを感じ、考え、学んでいます。
まだことばになっていない思い。
誰かに伝えようとしている気持ち。
昨日までは気づかなかった、その子の育ち。

その一つひとつに目を向けることで、子どもの見え方が少し変わるかもしれません。
そして、その子の育ちを知ることは、これからどのような経験や関わりが必要なのかを考えることにもつながっていきます。

子どものことばが気になったとき、誰かに相談してほしいと思います。
子どものことを一緒に考え、成長をともに喜び、ときには一緒に悩む。
そんなふうに子どもたちやご家族に向き合いたいと願っている専門家は、たくさんいます。
ぜひ、そんな人たちとともに、子どもたちの育ちを支えられる社会をつくっていきましょう。
私自身も、一人の言語聴覚士として、力を尽くしていきたいと思っています。